原状回復をめぐるトラブルを未然に防ぐために必要な知識

入居にかかる諸費用

不動産の賃貸借契約が終了すると、次の人が借りられるように、
借りた当時の状態に戻します。

これを原状回復と言います。

「原状回復」と聞くと、マイナス部分の修繕をイメージしがちですが、
プラス部分の撤去も含まれます。

原状回復で行うこと
・建物の損耗・毀損した部分の補修・修繕
・賃貸借契約中に増築・設置した部分の撤去・収去(取り除く)

そして原状回復に必要な費用のうち、
借主(入居者)も一部負担する義務があります。

これを原状回復義務と言います。

Contents

建物の損耗・毀損

建物の損耗等を大きく分けると、次の3つに分けることが出来ます。

(1)建物・設備等の自然的な劣化・損耗
(2)借主(入居者)の通常の使用により生ずる損耗
(3)借主(入居者)の通常の使用により生ずる損耗以外の損耗

建物の損耗等が上記の、どれに該当するかで、
借主(入居者)、貸主(大家)どちらが負担するものかに
分類することができます。

借主(入居者)が負担するものと、その具体例

(3)借主(入居者)の通常の使用により生ずる損耗以外の損耗
については、借主(入居者)が負担しなければいけません。

具体例
・引越作業等で生じた引っかきキズ
・落書き等の故意による毀損
・タバコの喫煙等で付いた臭いやクロス等の変色
・清掃・手入れを怠った結果、発生したシミ・カビ・サビ
・鍵の紛失または破損による取替え
・庭に生い茂った雑草

上記のように借主(入居者)の故意・過失(わざと、うっかり)、
善管注意義務(怠慢)違反、その他通常の使用を
超えるような使用による損耗等については、
借主(入居者)が負担しなければいけません。

貸主(大家)が負担するものと、その具体例

(1)建物・設備等の自然的な劣化・損耗等(経年変化)
(2)借人の通常の使用により生ずる損耗等(通常損耗)
についての必要経費は賃料の中に含まれているため
貸主(大家)が負担しなければいけません。

具体例
・家具の設置による床、カーペットのへこみ、設置跡
・畳の変色、フローリングの色落ち(日照、建物構造欠陥による雨漏りなど)
・テレビ、冷蔵庫等の後部壁面の黒ずみ(電気ヤケ)
(借主(入居者)が通常の清掃を実施している場合)
・専門業者による全体のハウスクリーニング
・エアコンの内部洗浄(喫煙等の臭いなどが付着していない場合)
・消毒(台所・トイレ)
・鍵の取替え(破損、鍵紛失のない場合)
・設備機器の故障、使用不能(機器の寿命によるもの)

次の入居者を確保する目的で行う設備の交換やリフォームなど、
建物価値の維持・増大という側面が大きいものについても
貸主(大家)負担となります。

増築・設置した部分の撤去・収去

賃貸契約中に借主(入居者)が増築・設置した部分に
ついては、たとえ建物価値を上げるものであっても、
原則、借主(入居者)が撤去・収去をする義務があります

ただし、例外として、条件を満たせば、貸主(大家)に
増築・設置した部分を買い取ってもらうことができます。

有益費償還請求権

有益費償還請求権の対象となる条件
・建物の客観的価値を増大させている
・建物の構成部分(取り外せない)の増築・設置
・所有権が賃貸人に帰属する(貸主(大家)のものになる)

※有益費については、貸主(大家)の同意・承諾は不要です。

上記の条件を全て満たしている場合、
借主(入居者)は、貸主(大家)に対して有益費償還請求
することができます。

有益費償還請求権の対象となる増築・設置の具体例
・キッチンの改良
・通路部分の舗装
・トイレを汲み取り式から水洗式に改造

造作買取請求権

造作買取請求権の対象となる条件
・建物の使用価値を増大させている
・建物に設置され、容易に取り外しができない
・所有権が借主(入居者)(借主(入居者)のもの)
・貸主(大家)の同意・承諾を得て、増築・設置している

上記の条件を全て満たしている場合、
借主(入居者)は、貸主(大家)に対して造作買取請求
することができます。

造作買取請求権の対象となる増築・設置の具体例
・釣り棚
・雨戸
・木造の間仕切り
・空調設備(エアコン)

原状回復にかかる費用の支出について

原状回復に掛かる費用は入居当初に支払った
敷金等から支出されます。

通常であれば、敷金等の範囲内で済みます。

敷金等だけでは、足りない場合は、別途費用を
請求されます。

敷金等が余った場合は、後日返還されます。

敷金等の返還時期は契約書によりますが、
大抵1ヶ月~2ヶ月以内に返還されます。

原状回復をめぐるトラブルを未然に防ぐには

これを守れば100%防ぐことができる!!

と言うわけではありませんが、下記2つのことを
実行すれば、トラブルをある程度防ぐことは可能です。

契約書を確認しよう

原則は原則としてあるんですが、特約を結ぶことで
負担区分を変更することができます。

例えば経年変化・通常損耗については、
貸主(大家)が負担するものですが、契約書の中で別途特約として
「借主(入居者)が負担する。」と記載があり、それに
合意(サイン)すれば、極端に貸主(大家)に有利な内容でなければ
借主(入居者)が負担しなければいけなくなります。

また、有益費償還請求権及び造作買取請求権についても
特約で「借家契約終了時に請求権を行使しない」と
記載があり、それに合意(サイン)すれば、
請求権を放棄したことになり、請求できなくなります。

上記のとおり、原状回復にかかる費用負担等のルールは、
ある程度決められていますが、それでも最終的には、契約内容、
物件の使用の状況等によって、個別に判断、決定されます。

そのため、必ず契約書を確認しましょう。

物件を確認しよう

入居時及び退去時の物件確認が十分にできていないことも、
原状回復にかかるトラブルの大きな原因の1つになっています。

貸主・借主の双方が立会いの上で、物件を確認していたとしても、
キチンと証拠をとっておかないと、いつからあった傷なのか、
わからなくなります。

そのため、書類や写真等の証拠を残しておくことをオススメします。

書類については、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」
の中に「入退去時の物件状況及び原状回復確認リスト(例)」があります。

それで大抵のことはカバーできますので、物件確認を
するときは、リストを印刷して持って行きましょう。

まとめ

賃貸物件に住んでいる限り、原状回復にかかるトラブルに
巻き込まれる可能性は0ではありません。

原状回復のトラブルに巻き込まれたときに困らないよう、
特に入居前の物件の確認及び契約内容の確認には、気をつけましょう。

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